目に見えない世界のおはなし4 〜真夜中のレスキュー隊〜
次の目的地は
私よりすこし年下の
女の子のお家だった。
私たちが主催したイベントに
遊びに来てくれて知り合い
「東北に来るなら
プロフィール写真撮ってほしいな!
よかったらうちに泊まりにきて〜!」
と声をかけてくれたのだ。
私もまゆさんも
その子と会うのは
これが2度目。
1度目は人がたくさんいて
そんなには話せなかったので
その子がどんな人生を歩んでいるのかは
全然知らないままだった。
その子の家に着いたのは
夜の11時頃だった。
「いらっしゃい〜
久しぶり、元気〜?!」
「元気〜!
ほんと呼んでくれて&
泊めてくれてありがとう!
夜中になっちゃってごめんね」
「全然大丈夫!
私はもう
夜ご飯食べちゃったんだけど
2人は食べた?」
「あ、うん!
うちらも食べてきたから
お構いなく」
たわいのない会話から始まり
明日の撮影は
どこでどんな感じで撮ろうか〜
なんてことを、ゆるゆると話す。
「実は今回がちゃぱうぉにか始動の
初旅なんだけど
既にめっちゃくちゃ
色んなことがあったんだよ!😳
私もまゆさんもビックリでさ…
なんかすごい世界に
足を踏み入れちゃったかもしれない」
「そうなんだね〜
いろいろ聞きたいなぁ!」
「私もいろいろ話したい♡
し、話も聞きたいよ〜!
でも 今日はもう遅いし
明日撮影だから
お肌のためにもゆっくり寝よう!笑
また明日たくさん話そう〜✨」
少ししかお話ししていないのに
気づけば時刻は12時過ぎ。
私とまゆさんは疲れすぎて
お風呂に入る元気がなく
明日の朝お風呂借りよう!と
そのまま寝ることに。
たしか
ワンルームの部屋に
3人で雑魚寝をしたと思う。
速攻で眠りに落ち
しばらく経った頃
突然の呻き声で
私は目を覚ました。
蚊の泣くような声で
その子が呻き声をあげていたのだ。
「どしたの…?」
「ん〜〜…ん〜〜…」
大量の脂汗をかいていて
真っ白な顔をしている。
「大丈夫??
どこが苦しいの?」
「うぅっ……」
これは何も話せなさそうだ…
なんとなく吐きそうな気配を察知し
ゴミ箱をそばに寄せる。
「まゆさん、起きて…!
すっごい具合が悪そうなの」
「ん〜…まじ?
大丈夫?」
寝ぼけ眼のまゆさんが
目を覚ました。
うなり声は大きくなる一方。
これは普通の状態じゃないね
何か大変なことが起こってそうだ。。
病院にすぐに連れて行った方が良さそう
それか、救急車を呼ぶレベルかもしれない…
その子の背中をさすりながら
どうするかを話し合っていた時
その子の顔つきが
ぐわぁあああっと変わった。
ものすごい禍々しい覇気みたいなものが
ぶわっと渦巻いたのだ
「#&5%.*:・!!!!」
言葉にならない叫び声をあげて
その子は
ゴミ箱に一気に嘔吐した。
その瞬間
嘔吐物ではない
なにか黒いものが
ぶわぁああああっと
身体からゴミ箱に出て行くのを感じた。
「・・・!!!!」
唖然とする私とまゆさん。
その直後
その子は普段の顔つきに戻っていた。
「だ、だ、大丈夫?!」
「う〜ん…
無理ぃ…
お腹痛いよぅ…」
ようやく話せるようになった!
慌てて水を持ってくる。
「お腹が痛いんだね…
昨日の夜なんか変なもの食べた?」
「なにも…
もう無理っっ」
「救急車呼ぼうか?」
「やめて…」
「でも、本当に辛そうだし
普通じゃないよ!
夜中の緊急外来探してみるよ」
時刻は夜中の3時。
全く知らない土地で
受け入れてくれる病院を探し
電話を何件かかけるまゆさん。
その間 背中をさすっていると
その子が叫んだ。
「触るな!!」
…!!
突然のドス黒く野太い声に
思わず身体がビクッと硬直する。
普段はとても可愛いその子が
また、見たことのない
鬼のような形相に変わっていたのだ。
そして、彼女はまた吐いた。
今度はさっきのような
大きな黒い塊では無く
黒灰色のモヤモヤした何かと
普通の嘔吐物を
吐いた印象だった。
「助けて…
背中さすって…」
…!
また普段通りのその子の顔だ。。
それを数回繰り返している間に
まゆさんは夜間緊急病院を
見つけてくれた。
「ここから15分くらい
かかるところなんだけど
大丈夫?
うちらの車に乗れる?」
「無理…乗ったら死ぬ…」
か細い声でそう言う。
「あっ…!
そういえばうちらの車
後ろがベッドになってるの。
布団をその上にしいて
寝る形だったらいける?」
「…それだったら大丈夫かも…
うぅっ…」
人は具合が悪いと
ほんとうにこんなにも
脂汗というものをかくんだな。。。
彼女はもう
限界に近い状態だった。
私とまゆさんは
彼女を抱きかかえて移動し
車の後ろに寝かせた。
直前に徹くんが作ってくれた
車のベッドが
まさかこんな形で役立つなんて……!
もはや
ちゃぱうぉにかレスキュー隊
救急車じゃん😳!
これが
その子ひとりの時じゃなくてよかった。。
もしひとりだったら
心細すぎてやばかっただろうな…
ついた病院先で
彼女は車椅子で運ばれいき
緊急検査を受けた。
結果は
特に異常なし。
いわゆる原因不明だった。
休めば良くなるでしょう、と
点滴を打ってもらった気がする。
少しベッドで休んで
顔色はだいぶんよくなっていたけれど
まだ苦しそうな様子だった。
再びその子を車のベッドに乗せて
帰路につく。
疲れ切ってしまったようで
家に着いた途端
その子は眠りに落ちた。
ぱっちりと目の覚めてしまった
私とまゆさん。
2人で顔を見合わせる。
「ねぇ、さっき吐いてた時さ…
般若みたいなの見えたんだよね、まゆ」
「えっ?!般若?!」
「うん。
なんかその子の顔が
クルッてお面みたいにまわって
般若みたいなのが出てきて
うわぁああって
暴れてた感じというか…
吐いたらまたクルッと変わって
その子に戻るというか」
「それ、わかる。
私は鬼みたいに感じた…
なんかよくわからないけど
その子とは別のなにか…というか
もしくはその子の中にある
何かなのか…?」
「うんうん…
てかさ
最初にゴミ箱に吐いたやつ…
アレ、やばいやつだよね?」
「わかる!!
なんかものっすごいどす黒くて
禍々しい何かが出てきてたよね?」
「うん。
吐いた食べ物が、とかじゃなく
なんかよくわかんないものが出てきてた」
「この部屋に置いておくと
やばそうじゃない?」
「ほんとそうだね
なんかよくわかんないけど
ひとまず外に出しておこうか…」
ゴミ箱をそっと持って
家の外に置く。
やっぱり普通ではない何かだ。
ものすごく強力なその重みに
何かをくらってしまう私。
「これ、外に置いておくだけでも
危ない感じする。。
部屋の空気もまだヤバい感じするし…
どうすればいいんだろ?」
「う〜ん…
よくわかんないけど
塩とかまいてみる?
神社とか?なんかやってるよね?」
!!!それだ!
部屋にあった塩を探し出し
とりあえず部屋や
表に出したゴミ箱にまいてみる。
「おぉおお…
なんか空気よくなってない?」
「ほんとだね!
息しやすくなったかも…」
「てか、塩とかまいたの
人生で初めてなんだけど」
「まゆも初めてだよ!
なんで塩まくと良くなるんだろ?」
「全然わかんない…」
何もわからないのに
塩をまいちゃってる自分たちに
もはや ちょっと笑えてくる。
「なんかめっちゃくちゃ
疲れちゃったね」
「そうだね…
昨日入れてないし
お風呂でリセットしたいな」
「それナイスアイディア!
ここのお家のお風呂は
今はやめた方が良さそうだから
近くの銭湯にでも行こっか」
時刻は朝の8時だった。
原因不明で
あんなに急に具合が悪くなるなんて
ふつうでは、ない。
絶対になにかが
ありそうだ…。
ていうか
一体わたしたちに
何が起こっているんだ…?
よくわかんないけど
よくわからないことが起こってる。
よくわかんないけど
そうとしか言いようがない
なにかが起こってるんだ。。。
これってどういうこと…?
連日の理解の範疇を超えた体験に
満身創痍になりながら
わたしたちは銭湯に向かうのだった。
…つづく。